
Oussama Ammar
暗号資産業界は、カジノから出るべきだ
暗号資産がカジノになったのは、偶然ではない。二つの力が、そこへ押しやった。
- あらゆるものを「証券ではない」と装わせる規制。それが、ミームコイン、見せ物のようなトークン、責任を伴わない売買の文化を生んだ。
- 公開株式市場から借りた価格発見の仕組み。とりわけ、NYSEのような取引所が使う、連続的で高頻度の指値注文板というモデルだ。長期的な本質価値ではなく、速さ、先回り、マイクロ秒単位の駆け引きのための構造である。
ファンダメンタルズを避ける規制と、投機に報いる市場構造を組み合わせれば、研究よりルーレット、シグナルより雑音の多い環境が生まれる。
道徳の失敗ではない。仕組みの失敗だ。そして、仕組みの失敗は設計し直せる。
すべての会社が、初日から上場していたらどうなるか
私の直感は、厳しいが単純だ。
初期段階の会社がすべて初日から上場していたら、イノベーションは死ぬ。
若い会社には、安定したファンダメンタルズがない。あるのは仮説、脆い進路、そして極端な下振れの可能性だ。プロダクト・マーケット・フィットさえ得る前に、毎日24時間、毎秒、市場価格が更新されれば、そのフィードバックは有害になる。
- 探索の代わりに恐慌
- 発見の代わりに短期志向
- 逆張りの思考の代わりに守りの戦略
イノベーションには、情報が公開されない時間が要る。事情を知らないトレーダーに毎分値付けし直されずに、アイデアを育てる時間だ。
暗号資産は、初期段階のプロジェクトを、公開市場型の価格発見にさらしてしまった。瞬時に、世界中で、容赦なく。
カジノになっても不思議ではない。プレシードのプロジェクトに、公開市場の取引を押しつけたのだから。
だが、価格を発見する方法は、連続市場だけではない。
代案を説明する前に、基本を理解しよう。
NYSEは、実際にはどう動いているのか
(初心者向けの説明)
多くの人は、NYSEは単純な場所だと思っている。誰かが買い、誰かが売り、価格が動く。
現実には、情報の非対称性、流動性の衝撃、戦略的な行動を吸収するため、細かく設計された仕組みだ。
簡単に説明しよう。
1. 連続取引は自然ではない。管理されている
NYSEは中央指値注文板、CLOBを使う。
- 買い手が買い注文を出す
- 売り手が売り注文を出す
- 価格が一致するたび、注文が連続的に約定する
だが、この連続的な仕組みは非常に脆い。そのためNYSEは、マーケットメーカー、流動性供給の義務、変動時の中断、サーキットブレーカーといった設計を重ねている。
2. NYSEで最も重要な部分は、連続していない
寄り付き、引け、変動による中断後の再開には、コールオークションを使う。
- 一定時間の注文をまとめる
- 一つの清算価格を計算する
- 全員が、その価格で取引する
まとめて行うこうした競売があるのは、連続的な注文の照合が、高速取引による攻撃、価格操作、薄い流動性に弱いからだ。
3. 指定マーケットメーカーは、カジノ化を防ぐためにいる
指定マーケットメーカー、DMMには、次の義務がある。
- 流動性を供給する
- 注文の不均衡を落ち着かせる
- 無秩序な価格形成を防ぐ
- 注文板が消えるとき、在庫リスクを引き受ける
任意の存在ではない。構造の一部だ。
こうした制約がなければ、NYSEは暗号資産取引の最悪の部分と同じ姿になる。板が薄く、価格が跳ね、操作されやすく、速度のゲームに支配される。
暗号資産は金融の悪い部分をコピーし、よい部分を無視した
暗号資産取引所は、連続指値注文板をコピーした。だが、次のものは持ち込まなかった。
- 義務を負うマーケットメーカー
- ボラティリティ・オークション
- 情報開示のルール
- 上場要件
- サーキットブレーカー
- インサイダー取引の取り締まり
- ガバナンスの仕組み
- 資産保管に関する保護
参加者を守る制度的な足場なしに、価格発見の機構だけを持ってきた。
連続市場が機能するのは、その周囲のすべてが成熟しているときだけだ。
暗号資産は、周囲に成熟したものが何もない環境で、連続市場を始めた。
結果は避けられなかった。激しい変動、操作、ミームコイン、投機的な回転売買だ。
非連続的な価格発見を研究する
暗号資産がカジノの段階を卒業したいなら、市場の時計を設計し直さなくてはならない。
連続取引は自然法則ではない。設計上の選択だ。そして、初期段階の資産にとっては、間違った選択である。
代わりの仕組みについて、本当の経済学とゲーム理論に基づく、新しい研究が必要だ。
1. 毎月、または四半期ごとの競売
こんな仕組みだ。
- 資産を取引するのは、月に1回か、四半期に1回だけ
- すべての注文を集約する
- ファンダメンタルズを反映する一つの価格を計算する
- 24時間365日の売買はしない
- マイクロ秒の駆け引きはしない
これなら、市場の動きを、実際のプロジェクトの情報が更新される周期に合わせられる。
2. インセンティブと整合する価格発見
次のような仕組みだ。
- 速さではなく、調査に報いる
- 操作できる余地を減らす
- 雑音を小さくする
- 長期保有者に、ふさわしい主導権を与える
3. 流動性に応じて頻度を変える
プロジェクトの成熟に応じて、頻度を上げる。
- 四半期ごとから、毎月、毎週へ
- それでも、連続にはしない
- 連続取引は初期設定ではなく、条件を満たして得るものだからだ
4. 競売、価格帯を限定した市場、混合モデル
探究できるものは、まだある。
- 封印入札による単一価格オークション
- ダッチオークション
- 終了時刻をランダムにするコールオークション(仕組みの悪用を防ぐため)
- 定期的なバッチオークション(Budish–Cramton–Shim)
- 価格変動幅を限定した取引
- 低頻度オークションを伴う、AMMと注文板の混合システム
暗号資産には、この研究が必要だ。この仕組みが必要だ。イノベーションを、24時間365日の値付け直しから切り離す必要がある。
さらに学びたい人のための最初の書架
カジノ型を超えた市場設計を理解したい人に、私なら次の研究や本を渡す。
マイクロストラクチャーの基礎
- Glosten & Milgrom(1985):逆選択、スプレッド
- Kyle(1985):インサイダー取引、価格インパクト
- Madhavan(2000):マイクロストラクチャーの概観
- Biais, Glosten & Spatt(2005):マイクロストラクチャーの基礎
オークション理論とバッチ市場
- Budish, Cramton, Shim(2015):高頻度のバッチオークション
- Vickrey(1961):オークション理論の基礎
- Milgrom(2004):古典的なオークション理論の教科書
メカニズムデザイン
- Myerson(1981):メカニズムデザインの基礎
- Mas-Colell, Whinston, Green:一般均衡と情報
- Rochet & Tirole:プラットフォーム経済学
現代の市場構造
- Harris(2002):Trading and Exchanges
- O’Hara(1997):マイクロストラクチャー理論
- Hasbrouck:情報シェア、価格発見
暗号資産とAMMの理論
- Angeris & Chitra:AMMの数学
- Uniswap v3ホワイトペーパー:集中流動性
- MEV研究:優先順位、価値の抽出、公平性
これらは、暗号資産の世界で生まれた文献ではない。暗号資産がカジノを再発明し続けるのをやめるために必要な、知的な道具だ。
Daedalium に初掲載。