
Oussama Ammar
ブートストラップは、ただの決まり文句ではない
まず、ブートストラップを簡単に定義しよう。外部からの資金を求める前に、自分の資源と売上を使って会社を成長させる方法だ。

そうして育った会社を、気づいていなくても知っているはずだ。
GitHub、AppSumo、MailChimpなどは、長い間、ブートストラップで開発し成長した。ここで言うのは、コンサルティングなどで稼ぎながら製品をつくった会社ではない。初日から製品を開発し、顧客に売るという、純粋な意味でのブートストラップだ。
それは間違いなく難しい。しかし難しい分、気持ちの面でも金銭面でも報われる。起業家にとって、満足した顧客ほど嬉しいものはない。事業の面でも、売上が伸びる会社は全員を喜ばせる。資金調達の日が来たときには交渉力となり、力を自分の側に置ける。
だから、資金調達の記事や助言には、その助言で得られる交渉力が、売上を伸ばして得られる交渉力に比べてどれほど小さいかを、注記すべきだ。「金がものをいう」と言うのには理由がある。自分にお金があれば、交渉で優位に立てる。相手だけが持っていれば、力はすべて相手側にある。たいていは、交渉の席を立ってもよいと思っている側が勝つ。
なぜ起業家は、売上に集中する前に資金調達の助けを求めがちなのか。一つの理由は、テックの記事やブログで繰り返されるおなじみの物語だ。誰かがアイデアを思いつき、資金を調達し、そのお金で会社を成功させる。この型は書きやすく、クリックされ、共有されやすい。そのため繰り返され、やがて唯一の道に見えてくる。

よい会社は、資金調達の機会が向こうから来るようにする。
ほぼすべての成功する会社には、資金調達が意味を持つ時点が訪れる。よい会社は、本当の成長と実際の顧客から生まれる交渉力を、自分の側に持って調達する。
よい会社は、よい起業家から生まれる。よい起業家は、何もないところからすばらしいものを築ける。そうなるために、何ができるだろうか。

創意工夫して、安く済ませる。
まだプロダクト・マーケット・フィットを探し、うまくいき始めたことを示す転換点を探している段階では、できる限りお金を使わないこと。少しお金があっても使わない。少なくとも、持っていることを忘れよう。若い起業家は誰でも失敗する。お金を払って失敗することも、無料で失敗することもできる。
お金がなければ、想像力を使って問題を解かざるを得ない。お金があったら探しもしない工夫や抜け道が見つかる。起業家は、問題にお金を投げつければよいという考え方をしてはいけない。
始めるのにお金は要らない。お金は道具であり、必要条件ではない。いずれ成長や速度を上げるために必要になるかもしれない。しかし始めることを妨げる理由であってはいけない。
お金がないことは、初期には助けにさえなる。最初の従業員を誘うとき、お金がなく、給料を払えないかもしれない。それでも手伝おうとする人は、あなたと事業を強く信じていて、そのエネルギーが、数量化できない形で事業を前へ進める。一度調達すると、急に仕事を求める人がたくさん来る。本当に打ち込む人と、給料だけを求める人を、どう素早く見分けるのか。できないと言うのではない。もちろんできる。ただ、お金が両刃の剣になる一例であり、初めての起業家には特にそうなのだ。
両刃の剣ではあるが、お金は避けて通れない要素でもある。ブートストラップでは、入ってくる売上が成長に使える資金になる。そのため財務の問題は、資金調達した場合よりも重要になる。役立つ財務の原則がいくつかある。

今の現金は、後の現金より貴重だ。
だから、リスクを対価に使おう。今日100ドルを節約でき、そのために5年後に1,000ドル払うことになるなら、やる。その節約分を使って、生き残り、成長し続けられる。
具体例を考えよう。デザインとブランドが重要な業界で、使えるお金が3万ドルあり、完璧なデザイナーを見つけたとする。問題は、費用が7万5,000ドルかかることだ。選択肢は二つある。今の予算には収まるが、会社の役に立たない劣ったデザインを選ぶか。あるいは工夫するか。その理想のデザイナーに今3万ドルを払い、たとえば2万個販売という節目を達成したら、残りの4万5,000ドルではなく9万ドル払うと約束してはどうか。今と将来の現金の相対的な価値を認めた提案になる。
大切なのは、そうした取引では、どちらも相手に恩を売っているわけではないことだ。全員が喜んで合意するなら、双方にとっての機会になる。
ただし、株式ではやらないこと。株式は永続する。現金でないからといって、本物の価格ではないわけではない。双方によい取引には気前よくあろう。しかし愚かであってはいけない。
ブートストラップでは、キャッシュフローの管理が生死を分ける。
基本は、早く回収し、遅く払い、高く売り、安く買うことだ。支払いを遅らせられれば、その分だけ現金を手元に置き、成長に使える日が増える。少しずるく見えるかもしれないが、周りもあなたへの支払いを遅らせる。早く払い、遅く回収すれば、周囲の全員の銀行になってしまう。キャッシュフロー管理が、今日や明日だけでなく、長期の成長にどう影響するかを、早いうちに理解する必要がある。
もちろん、必ず期日どおり払うべき相手もいる。従業員はその一つであり、だから採用にはとても慎重でなければならない。以前も言ったが、もう一度言う。悪い会社は、採用で問題を解こうとする。よい会社は、採用の失敗がさらに問題を増やすと理解している。信頼でき、自分が理解している仕事をする人だけを採用しよう。

採用したら、自分が最もよく知っている仕事を任せよう。
多くの人は逆をやる。得意なことを自分でやり、よくわからないことを任せる。しかしそれは最悪の管理方法だ。よく知る仕事ほど、品質を確かめやすいからだ。得意な仕事を任せれば、別のことを学び、上達する時間ができる。そしてそれも任せられる。最終目標は、すべてを任せることだと忘れないでほしい。そのためには、会社のあらゆる仕事を理解し、見守れる必要がある。
(インターンにも注意しよう。成長中で、プロダクト・マーケット・フィットを得た会社なら役立つ。しかしその前には、インターンが会社を潰しかねない。自分が何をしているのかわからないのに、何も知らない人に代わりにやらせるからだ。インターンの面接を楽しむのをやめ、本当に機能するものをつくろう。)
その考え方が身についたら、徹底して売ろう。最初の販売先は、自分の人脈と個人的なつながりであるべきだ。MenuNextDoorは、開始から数か月で毎週何千食も扱い、すばらしい自然成長を遂げた例だった。なぜか。創業者が最初に、自分の人脈へ徹底的に売ったからだ。食事を直接届け、お金を集めて配り、顧客に写真を撮ってSNSへ投稿してもらい、届く範囲を広げるために自分たちでできることは何でもした。勢いはそうして得る。強く動き、友人を巻き込もう。自分の人脈に売れなければ、その外にも売れない。
節約し、会社と現金を賢く管理し、周囲の全員に売る。これを実践できれば、厳しい環境でも大きな強みになる。投資家を追いかける側から、追いかけられる側になる。そして大きな利点の一つは、シードラウンドを飛ばして、直接シリーズAへ進める可能性だ。
シードを飛ばすことは、会社の一生に大きく影響する。
後のラウンドでも、持分をずっと多く保てるからだ。たとえばシードラウンドで20〜30%、場合によっては40%以上を、比較的小さな資金と引き換えに渡すとする。かつてのヨーロッパでは、それが最大100万ドル程度ということもあった。ブートストラップで売上を伸ばせば、その地点まで自力で行ける。その後、シリーズAで20〜30%を渡すとしても、より高い評価額で、シードの希薄化を受けずに済む。25%を二度渡す代わりに、一度だけにする。会社が続くほど、大きな違いになる。
それだけではない。何もないところからつくれたなら、シリーズAの調達で得られる信頼は、とても大きい。初期のスタートアップの評価は難しく、まだ実績がなければ高く見てもらいにくい。アイデアに価値はなく、事業に価値があるのだ。しかし、自分の意志と意欲だけでつくる力を示せれば、あなたへの投資が相手にとってよい取引だと納得してもらいやすい。その力を持って交渉の席に着くことには、金に値する……いや、株式と現金に値する価値がある。
Daedalium に初掲載。