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Oussama Ammar

集中しよう

起業家が最もよく聞く助言の一つが、「集中しろ」だ。あまりに多くの場面で繰り返されるため、その意味が曖昧になる。壁の小さな塗料の染みを見つめるのにも集中力は要るが、スタートアップの役には立たない。

そこから、大切なことが二つわかる。集中とは、単に一つの作業に意識を向けることではない。そして、事業の成長に役立つものでなければならない。集中は、目標、その達成への道筋、その道を前に進む一歩が何なのかを、はっきり理解することから始まる。

集中のための二つのルール。何をするにも全力で取り組むこと。そして、優先順位を賢く決めること。

第一のルールは、やっていることに自分の力をすべて注ぐということだ。顧客と話しているなら、どうすれば製品を購入したり導入したりしてもらえるのかに、完全に集中する。切迫感を持って動こう。効率がよいほど、誰が製品に関心を持っているかについて多くの情報が集まり、次の販売に素早く生かせる。自分が何かを中途半端にやっていると気づいたら、仕事のやり方か、その作業自体の価値を見直す必要がある。

その見直しは、第二のルールである賢い優先順位づけの一部でもある。何が価値を生むのか。起業家の前には、いつもやることが山ほどある。価値を生むものもあれば、生まないものもある。成長に貢献するものもあれば、しないものもある。自分でやっている手作業のうち、人に任せられるものはないか。起業家が、表計算への入力や帳簿の整理に時間を費やす理由は何か。ソフトウェア、Upwork、フリーランス、オンラインの業務委託を使える時代だ。使おう。時間を節約するのを手伝ってくれる人はいる。別のところでも話したとおり、時間はすべての起業家にとって最も重要な資源だ。

成長に直接つながらない仕事を、無視してよいという意味ではない。

たとえば会計は法的な責任であり、やらないという選択肢はない。自分が集中していないことも、完了させなければならない。会社を成長させはしないが、それでも必要な仕事が2割ほどあると理解して、賢く扱う必要がある。できる限り効率化し、自動化することを身につけよう。それによって、起業家である自分にしか扱えないことへ集中できる。

初期のスタートアップで、何を優先すべきか。

顧客と話し、製品を開発すること。それだけだ。これを直感的に理解する起業家には、いつも感心する。Algoliaの初期のチームは、特に集中して成果を上げた例だった。初日からその集中ぶりが見えた。できるだけ多くのコンピューターに自社のソフトウェアを入れることが、最優先だった。人に会って話し、クリックされるかどうかもわからないリンクを後からメールで送るという意味ではない。Algoliaのチームは人に会い、その場で顧客のノートパソコンを開いて、代わりにインストールしていた。初期の勢いはそうやって築いた。集中し、何も偶然任せにしなかったのだ。その後は利用者が自分で導入するようになり、チームは別の仕事に集中できた。しかし初期には、そういう集中とエネルギーが必要だ。

起業家にとって最大の気を散らすものは何か。受信トレイだ。

メールの大きな問題は、誰かが書いてきたら返事をする義務があるという古い考えに、多くの人がしがみついていることだ。これは、手紙を書くのが簡単でなかった時代の習慣に由来する。書くのに時間がかかり、紙を買い、切手を買い、郵便局へ行く必要があった。それだけのことをして手紙をくれた相手に返事をするのが礼儀だった。今、人に書き送るのに障壁はない。受信トレイへの参入障壁はゼロだ。コピーして貼りつけたり、短いメモを送ったりするだけでいい。誰でも書き送れるのだから、自分の集中すべき範囲に入らないものは、無視してもよいはずだ。

ただし、受信トレイの中で集中すべき部分もある。顧客からのメールだ。顧客のメールをインターンが管理するサポート用アドレスへ送る会社は、私には理解できない。これは最も重要なやり取りだ。貴重なユーザー情報を与えてくれて、顧客との結びつきを生む。私の助言は単純だ。会社のサポート用アドレスはCEOの受信トレイであるべきだ。CEOは、本当にすべてを処理できなくなるまで、一件ずつ返事をする。その時点で初めて任せ、顧客の幸福を担うサポートチームをつくる。ただし、その後も同じだけの気配りを続けなければならない。大切なことだからだ。

すべては集中の大きな利点につながる。集中こそ、自分が正しいか間違っているかを見極める最善の方法なのだ。

たとえば、若い起業家は皆、「ユーザーは誰ですか。市場はどこですか」と聞かれる。そしてこう答える。「私の事業はすばらしいので、誰もが好きになります。市場は全員です!」

それは焦点の定まっていない考え方であり、自分が正しいのか間違っているのかを教えてくれない。全員を狙えば、10代も、大卒者も、中年女性も、引退した高齢者も対象になる。集まるデータはひどく薄まる。自分のやることへの確信は得られないし、事業の奥で何が起きているかを読む勘も育たない。

代わりに、「市場は10代だ」と決めたとしよう。本当に10代に集中する。しかし誰も製品を使わない。一方で、30〜35歳の利用者が増えていると気づく。10代は自分の市場ではないとすぐにわかり、その人たちに売り続けて時間を無駄にしなくて済む。集中していたからこそ、市場区分を変えるためのデータが得られた。その情報が、製品の開発と次の一歩を助けてくれる。

つまり集中は、自分が正しいか間違っているかを、より早く明らかにする。優れた、集中できる起業家は、強みと弱みを素早く見つけられる。

採用も、起業家がよく焦点を失う場面だ。

焦点の定まった採用は会社に大きな利益をもたらし、そうでない採用は時間、エネルギー、お金、成功の機会を吸い取る。ほとんどすべてのスタートアップが、速すぎ、頻繁すぎ、時期尚早な採用をする。その理由は、採用が気持ちよい行為だからだ。人と会い、相手が自分のために働きたがる。実際にはまだ何も成し遂げていなくても、力と達成感を感じられる。

はっきり言おう。よくない会社は、採用で問題を解こうとする。問題に気づき、人を雇って解決しようとする。よい会社は、成長につながるから採用する。その違いがわかるのは、集中できているからだ。

スタートアップはほかに、どんな雑事を自ら増やすのか。早すぎる法人化をしないこと。

成長につながらない事務処理が増える。オフィスを借りたり、名刺を刷ったりする必要もない。多くの起業家は、それらが自分の仕事を正当化すると考えている。家族や友人に、「ほら、私はおかしくない。ちゃんと仕事をしている。オフィスもあるし、これが名刺だ」と言えるからだ。

しかし外部の承認を求めても、本当に自分の仕事を正当化する二つのこと、製品をつくることと顧客を見つけることには近づかない。そう、起業は孤独な取り組みだ。起業家として居心地をよくする方法ではなく、顧客を探そう。自分の会社を取り上げる記事を求めないこと。記事も、外部の声も、自分のやっていることを本当の意味で認めてはくれない。確信は内側、自分だけが知っていることから生まれる。だから目標を自分で定め、何を祝うかも自分で決める。ほかの誰にも理解されない目標かもしれない。それでも、内部のしっかりしたロードマップがあれば、本当に大切なことへ集中し続けられる。

そして多くの場合、起業家にとっての成功と失敗はグラフにできる。KPIを追う習慣をつけ、それぞれの違いを知ろう。基本的には、生存に関わる指標、業務の指標、見栄のための指標の三種類がある。

最も重要なのは生存に関わる指標で、99%の会社では売上に行き着く。

売上について考えるのに早すぎることはなく、売上成長に集中するのにも早すぎることはない。利用者の成長が重要で、売上を後回しにできる少数の会社を挙げることはできる。だが二つ覚えておいてほしい。第一に、初めて起業する人は、その立場にはない。売上に集中しないことは、すでに会社を築いて成功した人に許された贅沢だ。第二に、Facebookを除いたソーシャルメディア企業の評価額がどうなったかを見てほしい。肝心なのは、Facebookが初日から売上を追求し、実現していたことだ。

だから売上を追跡し、その数字を伸ばし続ける必要がある。絶対額で考えよう。今週100ドル売ったなら、来週は120ドル、その翌週は140ドル売る。それが追うべき数字だ。

二つ目のKPIは業務指標だ。検索すれば何千種類も見つかる。自分に合うものを選ぶことが重要だ。少数を選び、そこに集中しよう。自分に厳しくあれ。「ほら、この数字がいいから、順調だ」と言うための理由を探さないこと。生存に関わる指標に直接貢献する、少数の業務指標を追う。

最後は見栄のための指標だ。プレスリリースを出す直前や記者から連絡が来たときには見る必要があるが、実際には意味がない。たとえばFacebookページの「いいね」の数だ。記者はその数に驚くが、会社には大した影響がない。「いいね」は売上ではなく、大切なのは売上だけだ。見栄のための指標にも、役に立つ場面はある。しかし生存に関わる指標と混同しないこと。外の世界が感心するほどには、自分は感心しないようにしよう。

起業家にとってKPIは、順調なときも不調なときも教えてくれる親友になる。成功と失敗を測る基準を与えてくれるものだ。初期には見るほどのことがなくても、集中して見続けることで、頭がその数字を理解するようになる。小さな変化を見つけ、その週にやったことと結びつけられる。どうすれば数字に作用できるのかがわかり、事業の上下動が無意識に刻まれていく。

これらは、私自身と、観察してきたスタートアップの経験に基づく助言だ。しかし結局、「これに集中し、あれには集中するな」という一覧を渡せば済む話ではない。自分で感覚をつかまなければならない。その意味で、起業は自転車の練習に似ている。親は「バランス」「平衡」といった言葉で説明できるが、実際にできるまでは、その言葉の意味はわからない。何度も転び、いら立つ。それでも続けていると、突然、倒れずに安定して走れる。その瞬間に腑に落ち、完全に理解する。そして一度覚えたら、やり方は忘れない。

Daedalium に初掲載。