
Oussama Ammar
誰もが嘘をつく。
以前、自分の商品のラベルをデザインした起業家と話したことがある。見た目が悪かったので、そう伝えた。すると、「でも、聞いた人は皆、いいと言ってくれました!」と言う。きっと皆そう言ったのだろう。誰もが嘘をつくからだ。
性格が悪いからでも、相手を傷つけたいからでもない。人が嘘をつく理由はいろいろある。本人が気づかずについていることさえある。多くの嘘は善意から生まれる。だが、結果はいつも同じだ。あなたのスタートアップが死ぬ。
そこで、そのラベルを、その日たまたま近くにいた3人に見せた。起業家本人の商品だとは言わなかった。代わりに、自分たちが買ってきたもので、感想を聞きたいと伝えた。要するに、嘘をつく理由をなくしたのだ。ラベルは中立なものになり、目の前に座っている起業家本人と切り離された。すると全員が、正直に言った。「ああ、これは本当にひどいね」

いちばん役立つフィードバックは、あなたに気を遣わない人から得られる。
繰り返すが、その起業家が前に意見を聞いた人たちは、本人や事業を傷つけようとしていたのではない。むしろ、傷つけるのを避けたかったのだろう。だが、結果は逆になった。
問題の大きな部分は、起業家が最初に聞く助言が「ユーザーと話せ!」だということにある。本当は、それさえ2番目の助言であるべきだ。最初は「ユーザーを獲得しろ!」だから ;)
ユーザーと話すことの大切さを、これだけ大勢が説いているのだから、具体的な方法も、もう少し教えてくれそうなものだ。話すとはどういうことか。何を質問するべきか。ヨーロッパ市場に参入しようとする起業家には、どんな落とし穴があるのか。
話し始める前に、何を知りたいのかを理解しておこう。必要なのは、人が言うことではなく、考えていることだ。会話中は、言葉だけでなく、相手の振る舞いに注意する。雑談から、その人の癖をつかもう。些細な話題には即答する人が、商品について聞かれた途端にためらい始めるなら、想像力を働かせて嘘を探しているのかもしれない。だからこそ、先ほどの方法が役立つ。自分の商品だと知らせないことだ。それで、嘘をつく最大の理由が消える。それが無理なら、相手を少し熱くさせてみよう。人は興奮したり感情が動いたりすると、本音を言い始める。

相手を熱くさせれば、本音が出てくる。
次に、誰と話しているのかに注意する。商品にターゲット市場があるように、インタビューにも対象を定める必要がある。自分の取り組みに関心がある人ばかりではない。だから、誰もが質問に答えるのに適しているわけでもない。そうした人を見分けず、時間を無駄にしたり、間違った方向へ進む危険を冒したりしてはいけない。
実際に話し始める際には、ヨーロッパと米国・英国のインタビューには大きな違いがあることを覚えておこう。米国には、そしてある程度は英国にも、ほかの地域ではあまり見られないフィードバックの文化がある。英語を母語とする人の多くは、はい・いいえで答える質問に慣れている。質問表に沿って聞けば、できるだけ正直に答えてくれる。
一方、ヨーロッパでは、意見を求められることに慣れていない人が多い。閉じた質問を並べても、話は進まない。必要なのは、相手を本当の議論に引き込む、開かれた面白い質問だ。議論が生まれたなら、それは良い質問だったということ。商品について15個の質問を書き並べるより、本当の議論につながる良い質問をひとつ投げかけ、そこから問いを重ねるほうが、多くを得られる。
開かれた質問をするときも、一度に聞くのはひとつだけにしよう。ふたつをひとつの質問に詰め込むと、相手は混乱し、話が混ざる。わかりやすく聞こう。良い質問は、自然に次の質問へつながる。急ぐ必要はない。

一度に質問はひとつ。返ってくる答えをよく聞こう。
相手の信頼性を確かめる方法を、頭に用意しておくといい。実際にあった話だ。ある音楽スタートアップが、フィードバックを得ようと街頭に出た。ただ、欲しかったのは、音楽に詳しく、関心を持つ人の正直な意見だった。そこで、架空のバンド名を作り、その架空の音楽についてどう思うか尋ねた。80%の人が、その存在しないバンドを知っているふりをした。その時点で、彼らのほかの発言も聞き流してよいとわかった。格好をつけなかった20%に集中できたのだ。さらに大切なのは、「聞いたことがない。本当にいるバンド?」と答えた1%だった。その1%こそ、本当のターゲットだった。だから彼らの答えには意味があり、しかも正直だった。
それから、どこにいる人も賢く見られたがる。だから、助言を求めよう。もちろん、すべて従う必要はない。商品設計などを他人に丸投げすることはできない。起業家はあなたで、それはあなたの仕事だ。だが、助言を聞き、自分の扱う問題、ターゲット市場、商品を理解する材料にはできる。
インタビューで良いフィードバックを得るのは、印象派の絵を描くようなものだ。暖かい色も冷たい色もあり、それらが混ざって全体の感覚を生む。ある瞬間を正確に記録しようとする写実画ではない。だから、きちんとメモを取ろう。ただし、次の3つをするためのメモだ。
- 記述する。普段と違うものを見つけたら、書き留める。
- 推論する。観察したことから、仮説を立てる。
- 評価する。あとで検証できる理論を組み立ててみる。
複雑で難しそうに聞こえるかもしれない。だが、良い知らせがある。これは、とにかく何度もやらなければならない。そして、何度も繰り返すことは、必ず上達する。自分のスタートアップについて人に話を聞くのは、反射的な行動になるべきだ。どこでも、いつでもすること。日常の一部にしてしまおう。
従業員の日常の一部にもするべきだ。どう質問するか、フィードバックをどう判断するか、率直な意見をどう受け止めるかを、従業員にも学んでもらおう。ターゲットではない人から悪い評価を受けて慌て、間違った問題と戦い始める従業員ほど、困った存在はいない。良い情報を得て、取り組むべき問題に向き合うことは、あなたと同じように、彼らの日常の一部であるべきだ。
つまり、ユーザーとは常に話し続ける必要がある。そのとき、頭に置くべき考えはひとつ。「誰もが嘘をつく。だから私は、本当のことを求めなければならない」。ユーザーが無邪気な子どものように話せる状態を作ろう。社会的な遠慮を取り除く方法を見つけ、本音を出せる余地を与える。不快さはある。ユーザーとの会話がいつも温かく心地よいだけなら、うまくできていない。真実を求め、居心地の悪さを受け入れよう。そのほうが、スタートアップは強くなる。
Daedalium に初掲載。