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Oussama Ammar

スタートアップのアイデア入門

多くの起業家は、スタートアップで最も大切なのはアイデアだと考えている。ところが、スタートアップについての発信を見渡すと、誰もが「アイデアそのものに価値はない」と言っている。それでもなお、起業とはアイデアを思いつくことだと思われているのは、なぜだろう。

思うに、アイデアを得るプロセスがどれほど動的か、理解されていないのだ。アイデアは、「わかった!」という一瞬のひらめきだけで生まれるものではない。庭を散歩していたら突然、世界を変えるアイデアが降ってくるわけでもない。大衆文化も一役買っている。起業家がアイデアを思いつき、ほとんど一夜で成功させる姿ばかり描くからだ。

実際には、自分のアイデアがどれほど価値を持つか、事業が大きく育つまでわからない人がほとんどだ。Googleの創業者たちが、Yahooに100万ドルでGoogleを売りかけた話を忘れてはいけない。しかもYahooは、「いや、高すぎる」と断った。

世界でも最大級の企業になったGoogleを始めたのは、それがどれほど巨大になるのか理解していなかったふたりだった。

つまり、スタートアップのアイデアを得るのは動的なプロセスだ。自分の世界観を現実にぶつけ続けなければならない。絶えずフィードバックをくれるのは、現実なのだ。

だが、それだけではない。アイデアについての一般的な考え方には、ほかにも問題がある。たとえば、素晴らしいアイデアをひとつ得れば、それで終わりだという思い込み。アイデアは、会社と同じように生きている。プロジェクトを立ち上げ、動かし、世の中に出す。すると世界が反応を返し、そこから新しいアイデアが生まれて、会社の形を作っていく。大切なのは、その反応をどう聞き、どう扱うかだ。

もうひとつの誤解は、未来は受け身で待っていれば訪れるというもの。未来はまだ存在しない。私たちの周囲にあるものの多くは、誰かがどこかで、本気で力を加えた結果として生まれてきた。

だから、アイデアではなく、意思決定について話すべきなのだ。会社は、たったひとつの大きな決断でできるものではない。何千、何万もの判断を重ね、そのひとつひとつが自分のビジョンへ近づけてくれることを願いながら作っていくものだ。

つまり、何より大切なのは、思いついたアイデアをできるだけ早く試すことだ。競争は心配しなくていい。競争が本当に重要になる市場にいるスタートアップは、ごく少ない。競合の影響を受けるほどの規模になるまでには、とても長い時間がかかる。だから、多くのスタートアップは競争で死ぬのではなく、競合を気にして犯した間違いで死ぬ。スタートアップが競合を見るのは、誰かのInstagramを見て、それがその人の実際の人生だと思い込むようなものだ。

アイデアを試すときには、どんなスタートアップでも存在し得ることを覚えておこう。問題は、作るのがどれほど難しいかだ。アイデアがわかりやすく、すでにある市場につながっているなら、比較的簡単だ。アイデアがわかりにくく、市場も存在しないからといって、成立しないとは限らない。ただし、必要な努力と卓越した実行力を考えると、そこに自分の時間を使うのが割に合わないことはある。

だから、アイデアを選ぶ良い方法のひとつは、自分自身が欲しいものから始めることだ。自分の問題を解決し、世界に十分な数の自分と同じ人がいれば、そのスタートアップは成功し得る。

本当の問題は、自分にどれほど正直でいられるかだ。あまりに多くの起業家が自分を偽る。求める品質について偽り、自分がそれを作るのに適した人間かどうかについて偽り、思い描いたものを作るために必要な代償を払う覚悟があるかについて偽る。

簡単な例を挙げよう。何度もこんな相談を受けてきた。「アイデアがあるんです。今、開発者を探していて」

「なるほど。その人に払うお金はあるの?」

「いえ、お金はありません」

「では、会社のかなりの持ち分を、その人に渡す覚悟は?」

「いや、だって、私のアイデアですよ!」

アイデアに価値があるのではなく、実行に価値があるということを理解していない人とは、いつもこうなる。

こう考えてみてほしい。100人をひとつの部屋に集め、チョコレートケーキのレシピと材料を渡す。その中のひとりが、ほかの誰よりもおいしいケーキを作るはずだ。世界中に同じ部屋を20個用意して、それぞれの優勝者を集め、もう一度同じことをする。すると、またひとりが最高のケーキを作る。スタートアップの現実とは、そういうものだ。チョコレートケーキを作るか、ティラミスか、パブロバかという問題ではない。それは単なるアイデアだ。すべては実行で決まる。

アイデアと、自分が何を作れるかの間には、直接の結びつきはない。だが、市場と、得られる成功の間には関係がある。ほかより取り組みやすい市場はある。航空会社を作るなら、朝食用シリアルのブランドを作るより難しいだろう。だが、本当に問うべきなのはそこではない。自分は何者で、作ろうとしているものとどうつながっているのか、ということだ。

多くの人は、実行するとは本当はどういうことか、わかっていない。一夜の成功など存在せず、目に見える成果を支える仕事は何年も前から、会社ができるより前から続いていたのだと、理解していない。

そして、スタートアップのアイデアにおいて、秘密を見つけることはとても大きい。ピーター・ティールが語る秘密は、機密情報ではない。自分は知っていて、それは真実なのに、周囲の誰も気づいていないことだ。

自分の知る秘密が真実だと、ほかの誰にもわかってもらえないのはつらい。だが、始めるために彼らの承認はいらない。必要なのは、自分の市場を見つけ、その人たちと前進することだ。

だから起業家は、話すことに時間を浪費してはいけない。行動する側に立つべきだ。自分が正しいと人を説得するのをやめて、自分のプロダクトを愛してくれるユーザーのために、良い仕事をしよう。そして、そのユーザーをさらに見つけ続ける。

定義上、スタートアップとは不可能なものだ。簡単なら、すでに誰かがやっていて、問題は解決済みのはずだからだ。だから鍵となるのは、アイデアそのものではない。実行できる創業者とアイデアが結びつき、不可能を現実に変えることだ。創業者とアイデアの相性がどれほど重要か、十分には語られていない。

そこで、具体的な助言をひとつ。何をしたいか考えるのをやめて、誰とやりたいかを考え始めよう。本気で正直に答えれば、取り組み得るアイデアの数は絞られる。

子どもを持つことに少し似ている。欲しい子どもを選ぶのではなく、一緒に子どもを持ちたい相手を選ぶ。「緑の目の子どもが欲しい」と決めて、その遺伝子を持つ相手を探すのではない。「この人と一緒にいたい。この人との子どもが欲しい」と思うのだ。逆でなくて本当によかった。逆なら、ずいぶん奇妙な話だろう。自分を見つめ、自分を理解し、共同創業者を理解することは、何をするかを選ぶよりずっと重要だ。やることは変わっても、一緒にやる人は変わらない。

それがそろうと、アイデアはかなり自然に見えてくる。好きな人たちと一緒にいて、皆がXをやりたいと思っている。行動を始めると、アイデアは変化する。複雑になる。想像もつかないほど複雑になる。私が関わってきた優れた会社は、皆そうして始まった。起業家は、それが不可能だと気づかずに取り組み、進みながら問題を解いていった。自然なことだ。最初から登るべき山の全景は見えない。目の前の小さな一歩しか見えない。歩みを進めるにつれ、自分は強くなり、資源が増え、チームが大きくなり、より複雑な問題に対処できるようになる。それでも外から見ている人は、ある朝ひらめいたアイデアが、一夜で成功したのだと思い続ける。

アイデアに関しては、自分を信じすぎないほうがいい。自分に超能力はない。現実についての自分の認識は、あくまで自分の認識だ。現実そのものではない。アイデアを試そう。いくつも試そう。人々は、予想もしない反応をする。ばかなことをしよう。人は、ばかなことを試すのに十分な力を注がない。

「あれができたら、すごく面白いのに」と思うことがあるだろう。そういう話は、皆よくする。すると周囲は、「いや、そんなの絶対にうまくいかない。なぜそんなことをする?」と言う。人は基本的に、新しいアイデアを拒むものだ。

それは自然なことでもある。新しいアイデアの大半は、悪いアイデアだからだ。どれほど頭がよくても、本当に良い新しいアイデアを思いつく確率は低い。創造的な人と、そうでない人の本当の違いは、創造的な人はいつも、ばかなアイデアを試していることだ。

優れた料理人が作るものの大半は、それほどおいしくなく、客の皿に載ることもない。誰も合うとは思わない何千もの材料の組み合わせを、一日中試している。そして大半は、本当に合わない! だが、その失敗があるからこそ、誰も思いもしなかった見事な組み合わせが見つかる。

ひらめきとは、座って深く考えていれば、魔法のように何かが起こることではない。そんな仕組みではない。優れた料理人は、いつもまずいものを試している。優れた起業家も、同じ種類の実験をしなければならない。

起業家であることは、アイデアをひとつ持つことではない。変えたいものがあり、変革したい分野があることだ。その分野が好きで、そこでの課題に自分が挑むことに意味があるからだ。そして、何かがうまくいくまで、できるだけたくさんのばかなアイデアを、十分な熱量で試し続けることだ。

何回間違えていいのか。無限に間違えていい。だが、本当に意味のあるものを作るために、正しい答えを出す必要があるのは、ほんの数回だけだ。多くのスタートアップが可能性を出し切れないのは、ばかなことを十分に試さないからだ。

スタートアップが難しいのは、良いアイデアがいつも失敗するからだ。素晴らしい事業になりそうなアイデアはいくらでもある。それでも失敗する。私たちが間違っているからだ。起業家が適切な実行方法を見つけられなかったり、単に運としか言えない出来事や、それまで誰も理解していなかった事柄が起きたりするからだ。

スタートアップとは、考えることではなく、実行することなのだ。

Daedalium に初掲載。