
Oussama Ammar
スタートアップの最初の100日に、何をするべきか?
最初の一歩が、大きな一歩になる 👣

完璧な起業家はいない。とくに最初は、たくさんの間違いを犯す。大切なのは、最初の100日をできる限り有効に使うことだ。この時期の行動は、会社が伸びるのか、停滞するのか、落ちていくのかに、時間とともに何倍もの影響を及ぼす。
そこでつくった文化や空気は、その後もずっとついて回る。どんなエネルギーで動き、何に時間を使うのかを、この時期に決めている。後から変えられないわけではない。だが、最初からうまくやるより、後から変えるほうがずっと難しい。
具体例を挙げよう。フランスの企業には、フランス語の社名を選ぶところが多い。事業がうまくいき始めると、世界に出るためには名前を変える必要があると気づく。だが、その段階で社名を変えるのは、最初から世界で通用する名前を選ぶよりはるかに難しい。
これは一例にすぎないが、重要なことを示している。最初に目標を明確にしておくことだ。野心が大きすぎるということはない。世界的な企業を目指して、5年後に地元の受託会社を経営していたとしても、それはそれで構わない。だが、最初から地元の受託会社として考えていると、世界へ展開できる企業に切り替えるのはずっと難しくなる。
個人としても、最初の100日が起業家としての自分のエネルギーを決める。大きな目標を持つ会社をつくるには時間がかかる。アイデアが成立するか見極めるまでに1〜2年、成功したと言える会社になるまでに4〜5年、実際にエグジットに至るまでに5〜10年。つまり、最初から人生の次の10年を捧げるつもりでいる必要がある。
だから、最初の100日から「副業としてのスタートアップ」というものはない。立ち上げに必要なエネルギーは非常に大きい。起業家はそれを引き受けるべきだ。それこそ、どこかの会社に就職する道を選ばなかった理由なのだから。起業の根本には、自分の価値は今の履歴書に書かれていることよりずっと大きい、という宣言がある。スタートアップを始めるとは、「これまでの経歴を見ただけでは想像できないほどのことを、自分にはできる」と言うことだ。口にするのは簡単だが、証明するには膨大な努力とエネルギーがいる。
スタートアップ以外のことに使う時間には、現実のコストがある。目標を達成できるかどうかに影響する。最初の数年間は、やるべきことも必要なエネルギーも、到底すべてをこなせないほど多い。
どんなスタートアップも、自分が注げる以上のエネルギーを要求する。だから運も必要だ。ただし、運が巡ってくるのは、集中と活力を長く保ち続けたときだ。
周囲の人の立場からも考えてみてほしい。自分が100%を捧げる覚悟をしていないのに、共同創業者がそれ以上のことをする理由があるだろうか。自分が100%でないのに、従業員が勇気を出してついてくるだろうか。自分が引き受けないリスクを、なぜ投資家が引き受けるだろうか。
最初のあらゆる判断に、この考えを当てはめよう。自分の決断は、周囲にどう映るのか。何かがずれていると感じるなら、やめておく。
副業をしてはいけないとか、週末に何かをつくって楽しんではいけないという意味ではない。ただ、それは起業家であることや、スタートアップとは別の話だ。起業家になるのは、残された結末が死か成功かだけになったときだ。
具体的な話をしよう。最初の100日に何をするべきか。
本当に達成すべき節目を決める。ただし、日付で区切ってはいけない。「旅行アプリをつくる。6月にMVPを完成させ、9月に資金調達し、そのお金で広告を出して、12月に最初の1,000ユーザーを獲得する」といった目標は違う。
起業家からそういう話を聞くと、子どもと話しているときのような、ほほえましい気持ちになる。「大きくなったら宇宙飛行士になるんだ!」。いいね。私も小さいころは宇宙飛行士になりたかったよ。
日付を基準にした節目は幻想だ。時間を支配できる気になってしまう。そんなことはできない。スタートアップの運命を決めるのは神々であって、自分ではない。自分にできるのは、周囲を見渡し、自分で動かせることを見つけ、そこに集中することだけだ。
だから、節目は重要な指標を基準に設定する。その指標は、目標に近づくための具体的な行動と結びついていなければならない。
良い起業家なら、こう言う。「できるだけ早く顧客100人を獲得する。100人に達したら最初の正社員を雇い、自分は資金調達に集中する。企業価値400万ドルで最大100万ドルを調達できたら、次に……」。
具体的な節目を決めたら、自分にあるのは戦略ではなく戦術だと理解しよう。戦略とは、時間をかけて資金を配分することだ。始まったばかりのスタートアップには、お金も時間もない。使えるのは戦術だけだ。計画に使う時間を減らし、試す時間を増やす。
信じてほしい。答えは、やる前にはわからない。
最初の100日に行う実験はすべて、その時点で唯一重要なこと、プロダクト・マーケット・フィットに向かっている。覚えておいてほしい。プロダクト・マーケット・フィットは、達成すればはっきりわかる。疑問や議論の余地があるなら、まだ届いていない。特定の指標や販売個数、ユーザー数の話ではない。自分の手を離れて物事が回り始めたとわかる変化が起きることだ。注いだ努力以上の速さで会社が成長し、振り落とされないよう必死についていく状態になる。
最初はそうではない。何も猛烈には動いていない。大変な努力を注いでも、結果はほとんど返ってこない。いら立つものだ。だからこそ、試し続け、プロダクト・マーケット・フィットを探し続けることが大切になる。そこにたどり着けば、結果を通じて明確に感じられる。出している以上のエネルギーが、大量に返ってくるのだ。
考える時間の単位を短くしよう。100日、1か月、さらには1週間という単位で考える必要さえない。最初は、明日できることに議論を集中させる。それだけの時間しかないからだ。来週には会社がなくなっているかもしれないのに、なぜ来週の計画を立てるのか。だから最初は、2日でできないことには手をつけない。市場がプロダクトそのものを認めていないうちに、新機能の開発に何週間も使ってはいけない。時間を無駄にする危険が大きすぎる。
目指すのは完璧さではない。情報を得ることだ。起業家の最初の責任は、ほかの誰も知らないことを学ぶことにある。専門性と理解を高め、本当の専門家になる。できるだけ短い時間で、できるだけ多くを学べるようにする。
[補足:もちろん、これが当てはまらない場合もある。ディープテックなどだ。ただ、厳密に言えば、その段階のディープテックはスタートアップではない。非常に裕福な人々が資金を提供する研究開発プロジェクトだ。いつか市場に出る準備が整った日に、スタートアップになるかもしれない。]
やるべきことは以上だ。では、初期によくある間違いは何か。
何が、いつ重要なのかを理解していない創業者が多すぎる。最初に大切なのは二つだけだ。顧客と話すことと、顧客が愛するプロダクトをつくること。それ以外は気を散らすだけだ。ちなみに、初期には新規獲得より継続利用のほうがはるかに重要なのも、そのためだ。人々が繰り返し使い、ますます使うようになる良いプロダクトができる前に、新規獲得へ時間をかけても無駄になる。
身近な人全員に売ろうとしないのも間違いだ。友人や家族、かつて一緒に働いた人に、自分のプロダクトの良さを伝えられないのに、自分に何の関心もない人をどう説得するのか。最も身近な10人を納得させることは、本当に大切だ。その人たちこそ、本物の応援者になってくれる可能性がある。
心理的には、友人や家族に売る方法を覚えるより、知らない人に売る方法を覚えるほうがずっと簡単だ。親しい人の80%がプロダクトを使っているのに、その輪をどう広げるかわからないなら、問題はプロダクトではなく売り方にある。それは学べる。
初期の営業を、自分の手で徹底してやらない人が多すぎる。街でも、スーパーでも、配車サービスの車内でも、周囲のあらゆる人に話しかけるべきだ。毎日それを繰り返すことで、伝え方を学び、意見を集め、人々の反応を見ることができる。大変な努力だが、時間とともに報われる。
毎日一件の販売を成立させる喜びを侮ってはいけない。座ったまま夢を見て、年末までの売上を予測することもできる。だが、その予測より、今日、明日、明後日と、実際に一つ、二つ、三つ売るほうがずっと心が躍る。最初に踏み出す小さな一歩が、喜びと勢いを生み、やがて大きな一歩になる。
まず手作業で身につける前に、規模を拡大できる仕組みに頼ってはいけない。たとえば、面識のない相手に営業メールを送りたいとする。最悪なのは、いきなり大量配信を始めることだ。うまくなるには、毎日2時間、できるだけ多くの人に、できるだけ多くのメールを書く。ただし、同じメールは二度と書かないというルールを守る。それを3か月、毎日続ければ、テンプレートをつくって運任せで送るだけでは決してわからないことを発見できる。十分に学んだ後なら、自動化してよい。そのころには、勘がきちんと育っている。
普通の仕事らしく見せようとしないことだ。人から変な目で見られたくないというだけで、最初から愚かなことをする人が多い。たとえば、オフィスを借りること。なぜ初期に必要なのか。家で働けばいい。オフィスを借りるのは、それがないせいで本当に困るようになってからだ。たとえば、10人のチームが台所のテーブルを囲み、誰にも仕事をする場所が足りなくなったとき。そこでオフィスを持つのは嬉しいことだし、大きな節目になる。必要だから踏み出す一歩であり、ちゃんとした仕事をしている気分になるためではない。
インターンを雇わないこと。
インターンが多いスタートアップほど、早く潰れる可能性が高い。インターンという制度は、大企業には向いている。学ぶのに長い時間がかかり、社内に大量の知識が蓄積されていた時代の仕組みだからだ。だが、スタートアップでは全員が常にあらゆることを学んでいる。若手の従業員を探すのはいい。高校を出たばかりでも、一緒に働きたいと望む才能ある若者には門戸を開こう。ただし、その人を従業員として扱う。優れた仕事をし、学び、会社の成長に貢献することを期待する相手としてだ。
プロダクト・マーケット・フィットを達成する前に、メンターや顧問を探してはいけない。会社が急成長し、規模を拡大している段階では、自分が直面する課題を経験した賢い助言者を探す価値がある。だが、プロダクト・マーケット・フィットがないうちは、何がうまくいくかを誰も教えられない。その段階で自分が顧問になれると言う人は、口先だけだ。
最後に一つ。人が愛するものをつくることの大切さを忘れないでほしい。「まあまあ」と思う1,000人より、心から愛してくれる10人、20人、50人がいるほうがはるかにいい。その人たちと本当の関係を築こう。電話し、一緒に一杯飲み、プロダクトのどこが素晴らしく、どこが普通で、何を求めているのかを聞く。その人自身と、その人の本当の必要に関心を持っていると示す。スタートアップを熱心に支え、誰もが入りたくなる新しい集まりの一員になったと感じてくれる、小さな仲間の輪をつくることだ。
そうして、人々からの信頼を育て、自分自身への自信も育てる。その自信は、起業家であるために欠かせない。
Daedalium に初掲載。